スクワットもカールも「可動域は広ければ広いほど正義」だと思い込んでいないだろうか。フルレンジができない日は「今日はサボった」と罪悪感すら覚える人もいるはずだ。だが最新研究が示すのは、可動域の広さそのものより「どの範囲を使うか」のほうが重要だという事実だ。
結論
筋肥大を狙うなら、可動域を全部使うか、筋肉が伸びた位置(ストレッチ位置)を含む部分可動域を使うのが正解。逆に、縮んだ位置だけを動かす部分反復は優先度が低い。「可動域を広げる努力」より「正しい位置を使う意識」にシフトしよう。
研究① 伸張位パーシャルはフルレンジと同等の効果
Wolf ら(2025, PeerJ)は、トレーニング経験のある30名を対象に、片腕を伸張位パーシャル(LP)、もう片腕をフルレンジで8週間トレーニングさせる研究を行った。結果、筋厚の増加も筋持久力の向上もLPとフルレンジでほぼ同等だった。伸ばされた位置さえ使えていれば、可動域を無理に広げなくても十分な効果が得られることを示している。
研究② 長い筋長側の部分可動域がわずかに有利な部位も
Havers ら(2025, European Journal of Sport Science)は、上腕二頭筋を対象に、伸張位側の部分可動域(0〜70°)とフルレンジ(0〜140°)を8週間比較した。筋肉の中間部では両条件とも同程度の筋肥大だったが、より伸びた位置に近い部位では伸張位パーシャルがわずかに優れていた。一方、最大挙上重量はフルレンジがわずかに上回った。差はごくわずかだが、「どちらか一方が絶対的に正しい」わけではないことがわかる。
研究③ 長い筋長でのトレーニングは統計的にも優位
Strey ら(2026, Sport Sciences for Health)による系統的レビュー・メタ分析は、8件の研究データを統合し、伸ばされた位置でのトレーニングと縮んだ位置でのトレーニングの効果を比較した。結果、伸ばされた位置で行ったほうが統計的に有意に大きな筋肥大が得られた(効果量0.283、p=0.036)。個別の研究だけでなく、まとめて見ても同じ傾向が確認されたことは説得力がある。
今日からやること
- インクラインカールやルーマニアンデッドリフトなど、ストレッチ種目では伸びた位置でしっかり負荷を感じる
- フルレンジが取れない環境なら、伸張位を含む部分可動域だけでも十分と割り切る
- 収縮位置だけで完結するような部分反復は優先度を下げる
- 種目選びの基準に「伸ばされた姿勢で負荷が乗るか」を加える
- フォームに自信がなければ動画で自分の可動域を一度確認する
注意点
研究の多くは8週間程度の短期間・少人数を対象にしたもので、長期的な効果や初心者への当てはまりはまだ確定していない。伸張位トレーニングは筋肉痛が強く出やすいため、急激に負荷を増やすのは避けたい。また「伸張位」の位置は種目や関節によって異なるため、一律のやり方ではなく種目ごとに確認する姿勢が必要だ。
理想のからだを、知識で。
可動域は「広さ」で語るものではなく「どこを使うか」で語るものへ。今日のセットから、伸ばされた一瞬を意識してみよう。
—
**参考文献**
- Wolf M, et al. Lengthened partial repetitions elicit similar muscular adaptations as full range of motion repetitions during resistance training in trained individuals. *PeerJ*. 2025; PMID: [39959841](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39959841/)
- Havers T, et al. Partial Range, Full Gains? The Effect of 8 Weeks of Partial Range of Motion Training at Long Muscle Lengths on Elbow Flexor Hypertrophy and Strength in Trained Individuals. *Eur J Sport Sci*. 2025; PMID: [41247250](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41247250/)
- Strey B, et al. Muscle hypertrophy from partial repetition at long vs. short muscle length: A systematic review and meta-analysis. *Sport Sci Health*. 2026; DOI: [10.1007/s11332-025-01586-5](https://doi.org/10.1007/s11332-025-01586-5)

コメント