「重い重量を扱うとき、息はどうすればいいのか分からない」「なんとなく息を止めているが、それで合っているのか不安」——筋トレのフォームは意識しても、呼吸法まで考えたことがある人は少ない。だが2025〜2026年の最新研究は、呼吸のやり方一つで挙上重量やセット数、さらには心臓への負担まで変わることを示している。
結論
持ち上げる瞬間(コンセントリック局面)に「息を吸う」のは避けたほうがいい。パフォーマンスを優先するなら「吐きながら」か短い「息止め(バルサルバ法)」が有利だが、バルサルバ法は心拍・血圧への負荷が大きいため、高重量を扱う限定的な場面に絞って使うのが賢い選択だ。
研究①
Erdemir & Deniz(2025, BMC Sports Sci Med Rehabil, DOI: 10.1186/s13102-025-01460-4)は、トレーニング経験2年以上の男性12名を対象に、ベンチプレス(90%1RM×4回×6セット)を「吐きながら挙げる」「吸いながら挙げる」「息止め」の3条件で比較した。挙上中に息を吸う条件は完了セット数・総挙上重量ともに有意に低下し、自覚的きつさも他条件と有意な差が確認された。持ち上げる瞬間に息を吸う癖がある人は、それだけでパフォーマンスを損している可能性がある。
研究②
2025年にMedicina誌に掲載されたRCT(DOI: 10.3390/medicina61112031)は、健康な若年成人30名を対象に、腹部ブレーシングとバルサルバ法の心血管系への影響を比較した。両方とも心拍数・収縮期血圧を有意に上昇させ、脳への酸素供給量も一時的に低下した。バルサルバ法は中枢の血管抵抗をより強く高め、ブレーシングは末梢循環への刺激が強いなど、同じ「力む」動作でも体への負荷のかかり方が異なることが分かった。
研究③
Hummelmann et al.(2026, Physiological Reports, DOI: 10.14814/phy2.70831)は、健康な若年女性17名が3段階の強度でスクワットを行う際、「息止め」と呼吸を止めない「コントロール呼吸」を比較した。強度に関わらず、息止め条件は心拍数・心拍出量・収縮期血圧・心臓の仕事量の指標・主観的きつさのすべてで有意に高い値を示した。軽い重量のスクワットであっても、息を止めるだけで心臓への負担ははっきりと増えるという結果だ。
今日からやること
- 通常セットでは「持ち上げるときに吐く」呼吸を基本にする
- 1RMに近い高重量を扱う時だけ、短く息を止めるバルサルバ法を限定的に使う
- バルサルバ法を使うときは1回の挙上ごとに呼吸をリセットし、長く息を止め続けない
- 高血圧やめまいの既往がある人は、息止めより「吐きながら」を基本にする
- フォームだけでなく呼吸のタイミングも動画で確認してみる
注意点
研究はいずれも少人数(12〜30名)の急性効果を見たものであり、長期的なトレーニング成果への影響は明らかではない。高血圧・心血管疾患のリスクがある人は、バルサルバ法によって血圧が急上昇するため、自己判断で取り入れず医師に相談すべきだ。
理想のからだを、知識で。
「なんとなく息を止める」から「意図して呼吸を選ぶ」へ。同じ重量、同じフォームでも、呼吸一つで挙げられる重さも、心臓にかかる負担も変わってくる。
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**参考文献**
- Erdemir I, Deniz IE. *BMC Sports Sci Med Rehabil.* 2025 Dec; DOI: [10.1186/s13102-025-01460-4](https://doi.org/10.1186/s13102-025-01460-4)
- *Medicina.* 2025 Nov; DOI: [10.3390/medicina61112031](https://doi.org/10.3390/medicina61112031)
- Hummelmann et al. *Physiol Rep.* 2026; DOI: [10.14814/phy2.70831](https://doi.org/10.14814/phy2.70831)

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