「有酸素運動をすると筋肉が落ちる」「カーディオは筋トレの邪魔」——そう信じてジムではウェイトだけに絞っている社会人トレーニーは多いはずだ。時間が限られているからこそ、何を削るかは切実な問題でもある。だが2025〜2026年の最新研究は、この常識を静かに更新している。
結論。
有酸素運動は筋肥大を妨げない。ただし「何を・どんな強度で・どの順番で」やるかで結果が変わる。正しく設計すれば、心肺機能を上乗せしながら筋肉も育てられる。
研究① コンカレントトレーニングは筋肥大・筋力を損なわない(PMID: 41762427)
Held et al.が2026年にSports Medicineで発表した傘レビューは、17件のメタ分析・144研究・1,492名を統合した最大規模の分析だ。有酸素+筋トレの組み合わせ(コンカレントトレーニング、CT)と筋トレ単独を比較した結果、**筋力・筋肥大は統計的に同等**だった。さらにCTは有酸素能力(最大酸素摂取量)において筋トレ単独を大きく上回った(SMD=0.77)。「筋肉は守りながら、心肺機能だけを上乗せする」——それがコンカレントトレーニングの真価だ。
研究② 干渉を生むのはランニング。バイクなら安心(PMID: 35476184)
Viana et al.のメタ分析(Eur J Sport Sci, 2022)は、有酸素の「種目選択」が筋繊維肥大への干渉を決定づけることを示した。ランニングでは遅筋繊維(Type I)に有意な干渉効果が見られたが、サイクリング(バイク)では干渉が確認されなかった。同一セッション内の順番(筋トレ先か有酸素先か)は、筋繊維肥大に統計的な有意差をもたらさなかった。「有酸素をやめる」のではなく「何をやるか」を変えるだけで干渉を最小化できる。
研究③ HIIT後に筋トレより、低強度有酸素後に筋トレが吉(DOI: 10.3389/fspor.2025.1692399)
Frontiers in Sports and Active Living(2025)に掲載された半系統的レビューは、筋トレと有酸素の「順番」と分子シグナルへの影響を整理した。低強度の有酸素後に筋トレを行う順番では、筋合成シグナル(mTOR経路)への干渉が最小化されることが示唆された。一方、HIITと組み合わせた場合は一般的なトレーニーにおいてパフォーマンス向上効果が得られる傾向もあった。どちらが先かより、有酸素の「強度設計」が鍵だという結論だ。
今日からやること
- 有酸素はランニングよりバイク(エルゴメーター)を優先する
- 同日にやるなら「筋トレ→有酸素」の順番、または時間帯を分ける
- 有酸素は週2〜3回・20〜30分・中程度の強度(最大心拍数65〜75%)に留める
- 筋トレのセット数・重量を有酸素のために削らない
- HIITを入れるなら週1〜2回まで、筋トレ翌日は避ける
注意点
本稿の研究は主に健康な若年男性が対象で、女性・高齢者・上級者への一般化は慎重に行う必要がある。「両立できる」は「必ずやるべき」ではない。主目的が筋肥大のみなら、無理に有酸素を追加する必要はない。HIITの頻度が高すぎると疲労が蓄積し、筋トレの質が低下するリスクもある。
#理想のからだを、知識で。
「筋トレの邪魔をしない有酸素」は存在する。ランニングをバイクに換え、強度と順番を少し工夫する——それだけで、同じ時間でより強く・より健康な体が手に入る。有酸素を恐れるより、有酸素を味方につける知識を持とう。
**参考文献**
- Held S et al. *Sports Medicine*. 2026; PMID: [41762427](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41762427/)
- Viana RB et al. *Eur J Sport Sci*. 2022; PMID: [35476184](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35476184/)
- *Front Sports Act Living*. 2025; DOI: [10.3389/fspor.2025.1692399](https://doi.org/10.3389/fspor.2025.1692399)

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