筋トレで「力尽きるまで追い込む」は正解か?——RIR(余力残し)の最新科学

全力で追い込まないと筋肉は育たない」——そう信じてセットごとに限界まで絞り出しているトレーニーは多い。だが毎回のオールアウトで関節が痛み、翌日は動けず、気力まで消耗していくなら、それは本当に正解なのか。2025年の最新研究3本が「追い込みの適正量」について明確な答えを出している。

研究①「追い込み」は筋肉よりも気持ちを消耗させる

Refalo et al.(2025, Eur J Sport Sci, PMID: 39960821)は、トレーニング経験者18名(男女)を対象に8週間の試験を実施。片方の脚はセットを力尽きるまで(Failure)、もう片方はRIR 1〜2(あと1〜2回残す)で行った。結果、筋肥大・筋力の増加に統計的な差はなかったが、限界まで追い込んだ状態では不快感・知覚疲労・ネガティブな感情スコアが有意に高かった。毎回のオールアウトは長期的な継続意欲を静かに削っていく。

研究② RIRの差で「疲労の蓄積量」がまるで変わる

Varela-Olalla et al.(2025, J Strength Cond Res, PMID: 40644670)のシステマティックレビューは、追い込みの度合い・強度・ボリュームが疲労と自発的パフォーマンスにどう影響するかを系統的に検証した。限界に近いほど神経筋疲労が加速度的に蓄積し、セット後半の出力低下が顕著になることが確認された。週のボリュームを維持しながら追い込み量をコントロールすることが、長期的なトレーニングの質を守る鍵だ。

研究③「毎回RIR1」より「RIR4から段階的に下げる」のが合理的

Martikainen et al.(2025, J Sci Sport Exerc, DOI: 10.1007/s42978-025-00338-8)は、トレーニング経験者31名を10週間追跡。「常時RIR1(毎回ほぼ限界)」群と「RIR4→1(5週ごとに段階的に追い込みを強化)」群を比較した。筋肥大・筋力は両群で同等だったが、段階的に変化させた群はRPE(主観的運動強度)が有意に低く、同じ成果をより低い心身への負担で実現できた。

今日からやること

  • セットは「あと1〜2回は絶対できる」余力を残して終えることを基本にする
  • 週の最終セットのみ限界まで追い込む「締めの1セット集中法」を試す
  • トレーニング日誌にRIRを記録し、疲労とのバランスを定期的に見直す
  • 全力追い込みは週2回以内に留め、回復日を確保する
  • 「気持ちよく終われるセット設計」が長期継続の最強の武器と認識する

注意点

本稿の対象は主に中級以上のトレーニング経験者。初心者はRIRの自覚精度が低い傾向があるため、RPEスケールや動作の質を基準に判断するのが現実的だ。また「余力を残す」ことと「楽をする」は別物。十分な強度と正確なフォームが大前提であり、RIR管理はそのうえで活きる戦略だ。

#理想のからだを、知識で。

「あと1回」を残す判断は弱さではなく戦略だ。力尽きるまで追い込む必要はないが、十分な強度で毎セットを誠実にこなすことが筋肉への正直な投資になる。追い込みの量より、続けられる設計の精度が、長期的な体格の差を生む。

**参考文献**
- Refalo MC et al. *Eur J Sport Sci.* 2025 Mar; PMID: [39960821](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39960821/)
- Varela-Olalla D et al. *J Strength Cond Res.* 2025 Jul; PMID: [40644670](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40644670/)
- Martikainen O et al. *J Sci Sport Exerc.* 2025; DOI: [10.1007/s42978-025-00338-8](https://doi.org/10.1007/s42978-025-00338-8)

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