「プレワークアウトにシトルリンを入れれば、いつもより追い込める」——ジムでよく聞く話だ。パンプ感が強くなった気がする、扱う重量が伸びた気がする。しかし「気がする」と「実際に効果がある」は別物だ。2025〜2026年に発表された最新研究は、シトルリン(マレート)の効果に厳しい目を向けている。
結論
数週間単位で継続摂取すれば上半身の筋持久力をわずかに高める可能性があるが、トレーニング直前の一回摂取(急性摂取)によるパフォーマンス向上効果は乏しい。「飲んだ直後にパンプが来る」という体感の裏付けとなる血流拡張効果についても、証拠は弱い。
研究①
トレーニング経験のある男性33名を対象にした6週間の二重盲検プラセボ対照試験(PMID: 40470618)は、L-シトルリン8g、シトルリンリンゴ酸12g、プラセボのいずれかを毎日摂取させながらレジスタンストレーニングを実施した。結果、上半身種目(ベンチプレス+インクラインプレス)の限界反復回数はシトルリン群・シトルリンリンゴ酸群ともプラセボより有意に向上。運動後の一酸化窒素代謝物(NOx)も両群で有意に上昇した。ただしL-シトルリンとシトルリンリンゴ酸の間に差はなく、「malateを足す意味」は確認されなかった。
研究②
トレーニング経験のある男性46名を対象にした急性摂取の二重盲検試験(PMID: 41006371)は、L-アルギニン(体重1kgあたり0.15g)とシトルリンリンゴ酸(同0.1g)を運動前に摂取させ、ウィンゲートテスト・CrossFitワークアウト・ハーバードステップテストのいずれかを実施した。結果、ウィンゲートテストでピークパワー到達時間がわずかに短縮した以外、有意なパフォーマンス向上は見られなかった。「その場しのぎの一回摂取」に大きな効果は期待しづらい。
研究③
健康な男性12名を対象にした2026年の試験(PMID: 41867246)は、シトルリンリンゴ酸6gまたは12gを摂取後、前腕の血流依存性血管拡張(FMD)を測定した。血中の一酸化窒素前駆物質(シトルリン・アルギニン・オルニチン)は摂取量に応じて有意に増加したにもかかわらず、実際の血管拡張(FMD)には有意な変化がなかった。血液検査の数値は動いても、体感できるほどの血流変化には結びつかない「天井効果」の存在が示唆された。
今日からやること
- トレーニング直前の一回だけの摂取に過度な期待をしない
- 使うなら6〜8g前後を毎日、数週間単位で継続する「慢性摂取」型で試す
- パフォーマンスを本当に左右するのは睡眠・タンパク質・強度設計であり、シトルリンは補助でしかないと割り切る
- パンプ感=効果ではないと理解し、重量・反復回数・RPEの記録で客観的に判断する
- 「シトルリン◯g配合」を謳う高価なプレワークアウトサプリの宣伝文句に振り回されない
注意点
いずれも参加者12〜46名規模の研究であり、長期・大規模な追試は不足している。個人の一酸化窒素産生能力や腸内環境によっても反応は変わりうる。12gを超える摂取は胃腸症状(下痢・膨満感)のリスクが上がる点にも注意したい。
理想のからだを、知識で。
サプリはトレーニングの主役にはなれない。シトルリンに求めるべきは「劇的な効果」ではなく「積み重ねた先のわずかな上乗せ」だ。数週間単位で試し、体感ではなく記録で判断する——その姿勢こそが、サプリに振り回されない知識だ。
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**参考文献**
- Bayat D et al. *J Int Soc Sports Nutr.* 2025 Dec; PMID: [40470618](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40470618/)
- Selvaraj S et al. *Sci Rep.* 2025 Sep; PMID: [41006371](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41006371/)
- Grannes J et al. *Front Physiol.* 2026 Mar; PMID: [41867246](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41867246/)

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